破いて捨てたノート

Webやテクノロジーやそれ以外に関する思いつき

もう"UI/UX"と言わないで!弊社のエンジニアに知ってもらいたいUIとUXの基礎知識

この記事は UX Tokyo Advent Calendar 2015 の18日目として投稿しています。


こんにちは、とあるベンチャーでエンジニアをしている yachibit です。
UXやHCDに興味を持ちはじめてからまだ日の浅い人間なので恐縮ですが、UX Tokyo Advent Calendar 2015 に投稿させていただきます。

さて、早速本題に入りましょう。
釣りっぽいタイトルですみません。本投稿で、"UI/UX"という表現が間違っているから用語を正しく使え!といって斧を投げたいわけではありません。
UIとUXという概念を整理して理解することで、今後のサービス開発をより良いものにしたいという思いからこういった記事を書いています。

UIとは?

UI(= User Interface)は読んで字のごとくで、機械やコンピュータ、システムとその利用者の間で情報をやりとりするための接点のことです。
MVCモデルで言うところのView層に当たるのだと理解しています。

UXとは?

一方のUX(= User Experience)は、少し複雑です。
"ユーザー体験(経験)"と直訳してもいまいちピンと来ないので、諸々な定義を覗いてみましょう。

ISO9241-210:2010

製品やシステムやサービスを利用、および/もしくは予想された使い方によってもたらされる人々の知覚と反応

と定義されています。 「予想された」とあるように、利用の最中だけでなく、利用前や利用後も含めた時間軸を伴った概念であるということがわかります。
また「人々の知覚と反応」から分かるように、UXは製品やサービスに対して、利用者個人が内面で抱く評価や感情のことを指していると考えられます。

UX白書

2010年にドイツで行われたUXセミナーの成果をまとめたものです。
その中で、「ユーザーエクスペリエンスの期間」として下記の図が紹介されています。

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システム操作による体験はもちろんですが、それはユーザー体験のほんの一部(一時的UX)に過ぎません。
例えば、転職サイトのUXを例にとって考えてみます。 ユーザーは職場での出来事やこれまでに使用したことのある様々な転職媒体やサービスでの経験をもとに、何かしらの期待を持ってそのサービスを使いはじめます。
ユーザーはサイトのおしゃれさやコンテンツの質、量の充実度や使いやすさなどを見ながら、プラスやマイナスの感情を抱きます。 その後も内発的または外発的な動機によりそのサイトに再訪問し再び使いはじめます。
応募や面接の際も、そのサービスのツールとしての使いやすさや面接前後のフォローなど様々なタイミングと接点でサービスに触れながら何かしらの評価なり感情を蓄積していきます。 それが他のサービスより優れていれば使ってもらえますが、劣っていれば使ってもらえなくなります。

Jordan(2000)による消費者の欲求階層

人間中心設計の基礎』にも紹介されている、Jordan(2000)の消費者の欲求階層です。
システムには機能があることが大前提ですが、それが使いづらくてはどうしようもないのでユーザビリティを高めることが重要です。 ただし、使いこなせるだけでもまだ何かが足りません。それを超えるような嬉しさのようなものを付加していかなければならないのです。

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ユーザビリティ」を甘くないほうがいい

ユーザビリティという言葉が出てきたので、簡単に触れておきます。
まずISO9241-11でのユーザビリティの定義を見てみます。

ある製品が、特定の利用者によって、 特定の利用状況下で、 特定の目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率及び満足度の度合い。
・ 有効さ: ユーザーが、指定された目標を達成する上での正確さと完全さ
・ 効率: ユーザーが、目標を達成する際に正確さと完全さに費やした資源
・ 満足度: 不快のないこと、及び製品使用に対して肯定的な態度

開発の現場で、「使いやすいものにしたい」という言葉をよく聞きます。
この「使いやすい」というのは、ユーザビリティの定義でいうところの効率満足度のことを指していると考えられます。 もちろんそれらを高めることは重要です。
しかし、その前に絶対に見落としてはならないのは有効さに欠陥があることです。
例えば、とある入力フォームを開発しているとします。仕様通りのデータ構造と入力フォームを用意し、このフォームは正常に動作します。
しかし、実際にユーザーに使ってもらうと、どんなコンテンツをどの程度の量入力してよいか迷い、途方に暮れ、最終的に編集ページを閉じてしまうなんてことがあります。
製品が有効に機能しなければ、我々が作っているものはゴミと同然なのです。

UXについて考えるということ

我々が日々開発している対象は、モノではなくコトであると認識しながら開発を進めていくことが、UXについて考えることの本質ではないかと思っています。
「モノからコトのサービス開発へ」といった言葉は、言われてみれば当たり前のことですし、使い古された言葉ですが、この認識を持つことは非常に重要だと思います。
ユーザーはUIやシステムを使うことが目的ではありません。つまり、「ユーザーへの価値 = 機能」ではないのです。
開発に携わるメンバー各自が、UIや機能を作りさえすれば良いと矮小な視点で開発に臨んでいては、優れたサービスが出来るはずもありません。 コトをつくるための手段としてモノを作っている、そういった視点で開発に臨んでくことが、よりよいサービスを開発するための基本姿勢ではないかと思います。